訪問看護師になるための看護マニュアル

在宅がん化学療法のケアと援助

日常生活における注意点や、副作用とその対策について指導します。

 

病状の変化や予後、抗がん薬の副作用出現などに対する不安が大きい患者さんや家族のために、
ゆっくり話をする時間をとって、前向きに生活し治療できるようサポートします。

副作用の対応

副作用(薬物有害反応)には、
「白血球減少」、「血小板減少」、「貧血」、「アナフィラキシー」、
「悪心・嘔吐」、「口内炎」、「下痢」、「便秘」、「腎毒性」、「心毒性」、
「肝毒性」、「神経毒性」、「聴力障害」、「心筋障害」、「胚線維症」、
「白質脳症」、「肝硬変」などがあります。

 

@ 口内炎

 

化学療法によって口腔粘膜がしょうがいされ、白血球数が減少する状態が続くので感染が起こり、口内炎になります。

 

口内炎を予防するためには、口腔内全体の色の変化や口臭の有無を観察し、
口腔内の清潔と湿潤を保つために、歯磨きや含嗽を励行します。

 

口腔ケアはセルフケアが主体です。
口腔衛生の必要性を患者さんや家族、介護者へ指導します。

 

口内炎ができてしまったときには、抗炎症作用があるアズレン(ハチアズレ、アズノール)で含嗽し、
口内炎治療薬を資料するように指導します。

 

歯ブラシは、毛が柔らかくヘッドが小さめのものを使用し、
優しくブラッシングを行うように指導します。

 

口内炎による疼痛に対しては、
局所麻酔薬や鎮痛薬を口に含むことによって軽減できます。
医師に相談するようにします。

 

口内炎があるときの食事は、なるべく薄味にするようにします。
塩分が多いもの、果物など酸味の多いものは避け、
室温程度に冷まして口の中でつぶすことができる柔らかさにし、
とろみをつけると食べやすいことを家族や介護者に説明します。

 

食事が摂取できない場合は、刺激が少ない流動食や、
高カロりー栄養剤(エンシュアリキッド)、高カロりー輸液の利用を検討します。

 

A 悪心・嘔吐

 

化学療法に伴う嘔吐は、発症する時期によって「即時型」、「精神心理型」、「遅延型」の3つに分類されます。

 

ナポパンなど5-HT3受容体拮抗薬が効果的ですが、
心理面の関与もあるため、全てを予防することはできません。

 

使用する抗がん薬、投与経路、投与スケジュール、使用する制吐薬とその効果、
治療前後の嗜好と味覚の変化、悪心・嘔吐の有無や発現状況などを観察します。

 

悪心・嘔吐症状の出現時には、患者さんをファウラー位や側臥位として、
腹部の筋の緊張を和らげるような体位の工夫をします。

 

レモン水や冷たい水でうがいをしたり、
氷を口に含むことで悪心の予防になることを説明します。

 

不快出なければ衣類の上からアイスノンなどの保冷剤で
胃部を冷やす事も効果的です。

 

食事内容は患者さんの嗜好に合わせることを原則とします。
食欲のある時間帯に、食べられるものを少しずつ食べるように促します。

 

制吐薬の種類や使用時間の指示を主治医から受け、
制吐薬の使用とその効果、持続時間を観察します。

 

臭いの強い花や香水は避けて、部屋の換気をするなど、環境にも配慮するようにします。

 

病気や治療に関する不安など、
患者さんの訴えを傾聴することで不安が解消され、
患者さんが前向きに治療を行うことができるよう心理面でのサポートも行います。

 

深呼吸などリラクセーション法や、指圧療法が効果的な場合もあります。

 

指圧療法の例としては、上肢のツボ(内関)の指圧が効果的であるといわれています。
指圧療法は、内関に圧痛を感じるか感じないかの強さで
ゆっくり「1.2.3」と数えながら押して離し、
またゆっくり「1.2.3」とゆっくり押すことを繰り返して行います。
これを6時間ごとに2〜5分間行います。

 

B 下痢

 

下痢の発現時期は、抗がん薬の種類や投与量によって異なります。

 

コリン作動性の場合は、比較的早期に起こります。
そして、持続時間も比較的短時間です。
症状緩和のために、抗コリン薬が有効です。

 

腸粘膜障害による下痢は、投与後数日してから起こります。
持続時間は数日に及ぶことがあります。

 

下痢症状が現れたら、腸蠕動の鎮静や腹痛を和らげるために腹部を温めます。

 

不安や恐怖は副交感神経を刺激し、
腸蠕動や粘液分泌を亢進させて下痢を悪化させます。
精神的な安定が図れるようにサポートします。

 

食事は温かく消化が良いもの、食物繊維の少ない食品を選びます。

 

十分な水分補給が必要ですが、
一気に飲ませることのないように、少量を数回に分けて摂取させることが必要です。
スポーツドリンクを利用する場合は、2倍程度に薄めて、
炭酸飲料や牛乳などの乳製品は避けます。

 

排便後は、洗浄機能付きの洋式トイレによる洗浄、坐浴、清浄綿による清拭などを行い、清潔を保ちます。

 

便が皮膚に付着することで起きる皮膚のトラブルを予防するため、
撥水性の皮膚皮膜剤(ワセリン)や、油性軟膏(エキザルベ)、プレミアムパウダーなどを塗布し、
皮膚を保護します。

 

医師に、止痢薬や整腸薬の使用について相談します。

 

 

C 感染

 

化学療法の影響によって骨髄機能が抑制されると、
抗がん薬投与後一週間ほどで白血球の減少が見られるようになります。

 

白血球が減少すると身体の抵抗力が低下し、感染症を起こしやすくなります。
予防と感染の初期症状を見逃さないように注意します。

 

環境を調整し、手洗いや含嗽の励行、皮膚の清潔を保つことなどで感染の予防に心がけます。

 

易感染状態であっても感染を発症していない場合、自覚症状がありません。
患者さんは状況を軽視してしまいがちなので、
血液検査の結果を患者さん自身に伝え、患者さん自身が感染への危険性を認識できるようにします。

 

患者さんには、疲労時は無理をせず休むこと、怪我をするなどして傷を作らないこと、
日常生活の中での注意を具体的に指導します。

 

白血球数が少ないときにはマスクを使用し、
人ごみや風邪を引いている人との接触を避けるようにします。

 

食事は生ものやチーズを避けて、
新鮮な食材を加熱調理し、すぐに食べるように指導します。

 

発熱、風邪症状、尿路感染症、傷の有無や傷の感染症状がないかを観察し、
症状が現れたときにはすぐに医師や看護師に相談するように指導します。

 

D 血小板減少

 

血液データの把握するのと共に、出血しやすい部位とその徴候の観察を行います。

 

皮膚・粘膜・臓器・中枢神経での出血が予測されます。
患者さんには、出血しやすい状況であることを説明し、
日常生活上の注意点について指導するようにします。

 

・転倒や打撲による外傷を予防する。
・口腔ケア(歯磨き)による出血を予防する。
・ヒゲをそるときには、電気カミソリを使う。
・鼻を強くかまないようにするなど鼻出血を予防する。
・入浴はぬるめの湯で短時間に行う。
・排便時には、努責しすぎないようにし、排便コントロールをする。
・採血をしたらよく圧迫する。

 

E 皮膚や爪への影響

 

症状の出方には個人差がありますし、
抗がん剤の種類や治療の組み合わせなどによっても異なりますが、
化学療法によって皮膚や爪が黒味を帯びたり、発疹ができたり、
皮膚が乾燥することがあります。

 

皮膚の清潔を保ち、皮膚の乾燥を予防するために
刺激性の少ないローションなどを使用します。

 

アルコールを含む化粧水や、クールダウンするようなローションは
肌への刺激になりますから、避けるように指導します。

 

爪は短く切ることで、皮膚を傷つける心配がなくなりますし、
爪が割れてしまうことを防ぐこともできます。

 

F 脱毛

 

治療前に脱毛の情報を提供し、脱毛の時期や程度について伝えるようにします。

 

脱毛は、一時的であり、可逆的であるので、
治療が終了すれば必ず毛が生えてくることを十分に説明します。
精神的な安定が図れるようにサポートします。

 

脱毛初期は、毛がカタマリになって抜けます。
ブラシは目の粗いものにして、丁寧にブラッシングするようにします。

 

シャンプーは中性で刺激の少ないものを使用し、
洗髪回数を減らすようにします。

 

脱毛が著明になると毛髪が散乱します。
ベッドブラシや粘着テープを使用して、ベッドの周囲を清潔にします。

 

脱毛は、ボディイメージの障害をきたすので、
帽子やスカーフ、カツラを勧めるなど、気分転換を図るようにします。

 

抗がん剤による脱毛は、髪の毛、眉毛、まつ毛、体毛など全てに症状が出る可能性がありますが、
その程度は個人差があります。
落ち込んだり悩んだりしてしまう人が多いため、
看護師の適切な精神サポートが大切です。