訪問看護師になるための看護マニュアル

在宅看護での疼痛の管理

痛みは、局所性の痛み、神経性の痛み、心因性の痛みなどがあり、
様々な原因で起こります。
そして、痛みの部位や程度は多種多様で、
個人によって痛みの訴え方も異なり、
おかれている環境や過去の生活経験なども大きく関与すると考えられています。

 

経過をみながら対応しても良い痛みもありますが、
一刻の猶予もない緊急搬送が必要な痛みもあります。
その判断は、在宅では医療従事者がいないので、家族が行うことになります。

 

慢性的な痛み、急性的な痛みなのかによって対応が異なったり、
痛みの原因や部位によって対応が異なるので、
それぞれの痛みに応じた痛みの管理が必要になります。

 

気分転換で軽快する痛みもありますし、
体位変換・患部の温め・患部の冷却・マッサージなどの物理的な方法で軽快する痛みもあります。
また、鎮痛薬を使用したり、神経ブロックなどを行わなければ治まらない痛みもあります。

家族への支援

痛みのある患者さんを抱えて24時間看護を行う家族の負担は
かなり大きいものであると想像がつきます。

 

家族への支援は、介護力を正しく評価し、
日常から患者さんの病態や予測される痛みの症状や特徴など、
繰り返し説明をして理解してもらうことから始まります。

 

患者さんが痛いと訴える場合は、我慢させることではなく、
訴えを聞き入れ、対応することが重要です。

 

主治医や患者、家族と疼痛マネジメントについて十分な話し合いをし、
緊急の場合の鎮痛薬の方法など、一定の取り決めをしておくことが必要です。

 

判断に迷う場合や、緊急性が疑われる時には、
いつでも主治医と連絡をとることができるよう、
緊急時の連絡先をカレンダーや紙に大きく書いて壁に貼り、
誰が見てもわかるようにしておくなどの対策も有効です。

 

訪問看護ステーションから訪問看護を受け付ける際、
緊急時訪問看護加算の契約をしておくと、24時間いつでも相談できるようになります。

痛みの観察のポイント

同じ病気の患者さんで、同じような状態にあっても、
痛みの程度は過去の経験や環境因子などによって大きく異なり、
個人差があります。
ですから、痛みの程度の判断基準は、
患者さんの訴えを尊重し、それぞれの患者さんに合った疼痛スケールを選んで使うと、
痛みの程度が表現しやすくなります。

 

痛みがないことがもっとも望ましく、
痛みがあっても普通に生活をすることができるように
コントロールされている事も望ましい状態です。

 

痛みの部位は、必ずしも病変部位と一致しません。
どのような痛みか、いつ頃から痛んできたのか、
どのような状況で痛んできたのか、
消化器症状や呼吸器症状、熱、腫れ、運動制限、意識の状態など、
随伴症状の有無に注意氏ながら訴えの内容を十分に聞くことが大切です。

 

会話ができない患者さんの状況の場合は、
家族からの情報だけでなく、患者さんの表情、態度、しぐさから
貴重な情報が得られます。
見落としがないように観察し、対応します。

 

認知症の患者さんの場合は、日常の行動パターンを参考にし、
なるべく正確に情報を得ることが必要です。

 

骨折しているにもかかわらず、歩行している患者さんも少なくありません。
転倒後の歩行状態や腫脹の有無にも十分気をつけなければなりません。

痛みへの対応

痛みは早期に対処することが重要です。
患者さんの訴えを受け止めて状態を判断し、
自宅対応できる状態であれば対症療法で経過をみます。

 

意識障害や嘔吐など、随伴症状がある場合や、
苦悶を呈する胸痛・腹痛など重篤な場合は危険なので救急搬送します。

 

痛みが治まり、患者さんや家族の不安が早期に取り除かれるよう、
マネジメントするのが看護師の役割です。

ガン性疼痛の緩和

がん患者さんにとって在宅で生活するということは、
苦しい痛みに対する不安が付きまとうものですし、
苦しい痛みの症状が出れば、その症状は耐え難いものであります。
痛みは単に侵襲された臓器にのみおこるのではなく、
神経系の損傷や、機能的異常によって複合的におきます。

 

@ 3段階除痛ラダー方式
痛みのコントロールは、鎮痛薬に頼ることがほとんどです。

3段階ラダー方式という「疼痛治療指針」が、WHO(世界保健期間)によって作成されています。

 

この3段階ラダー方式では、
医師が効果と副作用を見ながら薬物を選定していくことにより、
90%もの痛みが緩和されるという報告があります。

 

まず、第一段階では抗炎症性、鎮痛、解熱作用のある一般的な薬物が使用されます。
効果によっては第二段階、第三段階のモルヒネの使用となります。
ですが、一般的には、第一段階で使った薬物を併用しながらコントロールしていきます。

A 疼痛治療
主治医と十分に話し合い情報を共有することが重要です。

 

薬物の種類や量、与薬の方法(内服、注射、貼布)などの確認や、
副作用や除痛効果の評価と対応策について、
薬物や必要物品は誰がどのように調達するかなどについても打ち合わせをしておきます。

 

痛みの観察は、約物の使用量や副作用の有無、患者さんや家族の情報から評価します。
主治医に報告し、指示を得ますが、
看護師は患者さんや家族からの質問に的確に応じることが必要なので、
薬理作用についても熟知しておくことが大切です。

家族の役割

がん患者さんの傷みは、肉体的な痛みだけではありません。
精神的な痛み、社会的な痛み、スピリチュアルな痛みなど様々です。

 

家族による精神面の充足は、痛みを軽減したり安定した生活を営むために
大きな支えとなっているので、家族の果たす役割は大きいものがあります。
例えば、家族と一緒のテーブルにつき、
好きな食事を誰に管理されることなく食べられることや、
具合が悪い時に自分を心配してくれる誰かがそばにいるということだけで
痛みが和らぐ事もあります。

 

ですが、絶えず患者の病状や終末期への不安がある家族に安楽な日はなく、
介護に限界を感じる事もあるため、
訪問看護の看護師は、家族の気持ちを受け入れ、共感し、
家族と一緒に患者さんを見守ることが大切です。

 

そして、誠意を持ってサポートする看護師の
ゆとりある態度が、痛みの看護の根源に繋がります。